【読書】展望塔のラプンツェル(宇佐美まこと)
こんにちは。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今日は山に行かなかったので、家事を済ませた後は一日中、本を読んでおりました。
まだまだ宇佐美まこと週間継続中なので、やっぱり宇佐美まことさんの作品です。
その名は「展望塔のラプンツェル」。
幼児虐待をテーマにしていると聞いていたので、手に取るのを躊躇っていました。
ただでさえ残虐な場面を容赦なく描く宇佐美さんですから、きっと心が耐えられないのではと思ったからです。
怪異や過去の話ならまだしも、幼児虐待は現在進行中の問題ですから、今この瞬間も親に躾という名の虐待を受けている子供が日本中にいるだろうと思うと、知りたくないという気持ちになります。
しかし、この作品は宇佐美作品の中でも高い評価を得ていて人気ランキングでもトップスリーに入るようなので、意を決して読んでみることにしました。
【展望塔のラプンツェル】宇佐美まこと著(光文社)
《表帯》
◎第33回 山本周五郎賞候補作
◎本の雑誌が選ぶ2019年度ベストテン 第1位
弱者に光をあてる長編ミステリー
驚きのラスト!!
《裏帯》
多摩川市は労働者相手の娯楽の街として栄え、貧困、暴力、行きつく先は家庭崩壊など、児童相談所は休む暇もない。
児相に勤務する松本悠一は、市の「こども家庭支援センター」の前園志穂と連携して、問題のある家庭を訪問する。
石井家の次男壮太が虐待されていると通報が入るが、どうやら五歳児の彼は、家を出てふらふらと徘徊しているらしい。
この荒んだ地域に寄り添って暮らす、フィリピン人の息子カイと崩壊した家庭から逃げてきたナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け、面倒を見ることにする。
居場所も逃げ場もない子供たち。
彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかーーー。
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予想通り、目を背けたくなるような虐待の場面が執拗に描かれます。
幼い子供の育児放棄、躾と称した虐待、家族からの性的暴行、、聞くもおぞましい現実と、逃げ場のない子供たち。
同時に描かれる不妊に悩む夫婦の葛藤も痛々しいです。
「そんなにその子が憎いなら、、、私にその子をちょうだい」
郁美の心の叫びが辛い。
それと対比して17歳のナギサとカイと5歳のハレが一緒に過ごす場面は、気持ちが温かくなります。
しかし、このままこの小さな幸せは続かないだろうと思うとそれもまた心が痛む。
街にあった展望塔を指差し、ナギサはハレに伝えます。
「あの塔が見える?」
「あそこにはね、きれいな娘が住んでいるの。ラプンツェルっていう名前の。金髪で、すごく長い髪の娘」
「そして、かわいそうな子がいるとね、自分の髪を垂らしてあの塔の上に引き上げてくれるの」
「だからね、心配しなくていいよ。ハレもいつかあそこに上げてもらえるからね。ラプンツェルはきっと見てるよ、あんたのこと」
展望塔は彼らの希望だったのです。
「ハレ、自分の人生を他人にまかせるな。 お前の人生はお前のものだ」
わずか5歳の口のきけない幼児に残す17歳の言葉が胸に突き刺さります。
児相職員の言う「究極の選択」とは?
その意味を知った時、鳥肌が立ちました。
登場人物に一人も無駄がない!
そして、驚きのラスト!
う~ん、凄い!
読んで良かったです。
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