【読書】黒牢城(米澤穂信)
こんにちは。
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今回は先日直木賞を受賞した「米澤穂信」の「黒牢城」を読んだ感想です。
この「黒牢信」は少し前に本屋でジャケ買いし、しばらく我が家のリビングの隅に積まれていたのですが、先日直木賞を受賞したと聞き、読書途中だった他の本を投げ出して手に取りました。
【黒牢城】米澤穂信著(角川書店)
《表帯》
信長を裏切った荒木村重と、幽閉される黒田官兵衛
《四面楚歌の有岡城で、二人の推理が歴史を動かす》
辻真先(ミステリ作家)
牢獄の知将と謀将の対峙が、武門の意気地を腑分する。
これはミステリの新天地だ。
本郷和人(歴史研究者)
骨太な合戦描写とちりばめられた疑惑。
複雑に絡み合う「なぜ」が物語末尾で爆発する。
《裏帯》
「おぬしならばこの曲事を解ける」
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。
織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。
動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。
事件の裏には何が潜むのか。
戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。
《デビュー20周年の到達点》
「満願」「王とサーカス」の著者が挑む戦国✖️ミステリ
📖📖📖📖📖📖📖📖📖📖
こ、これは、、これは凄い!
めちゃくちゃ面白かったです!(稚拙過ぎる表現でスミマセン💦💦)
命のやり取りが当たり前の時代に生きた将たちの誇りと恐れを、丁寧にそして鮮やかに描いた戦国ミステリーです。
信長に叛き籠城した荒木村重の目線で物語は進み、読者もその思考の深淵に彷徨い落ちていきます。
私の心は村重と共にありました。
村重の思考の深さは正に地下迷宮のようです。
それは、どこまでも深く、暗く、出口が見えないように思えて、必ず一筋の光明を探し出します。
読者を唸らせる場面が何度も現れ、「なるほど!」と膝をうち、ちょっと賢くなったような錯覚に陥る知略読本のようでもありました😁
軍議の場で、御家人たちの表情を読み、発言の裏にある心理を探り、瞑目し、真実を見抜こうとする村重。
人は城だからです。
「将卒が大将の器量を疑う城は、いかに堀深くとも容易く落ちる。なぜならそうした城では、兵が夜ごとに逃げ去り、将は敵の甘言に乗るからだ。」
そんな城主は城内の不穏な空気を敏感に察知し、人心を静めるために、次々に起きる奇怪な事件の真相を暴こうとします。
幽閉した織田の軍師・黒田官兵衛の知恵を借りようとする村重ですが、その官兵衛は一筋縄ではいきません。
土牢にて知略を巡らす官兵衛のなんと不気味なことか!
官兵衛の謎かけに翻弄され、次第に追い込まれていく村重の心に生じたのは「迷い」でした。
読者は村重に寄り添い、彼の苦悩に痛みを覚えることでしょう。
城主とはなんと孤独な存在なのかと。
戦国時代に生きた武士たちの、隙のない立ち居振舞いと、緊張感漂う簡潔な言葉の美しさ、清々しさに心を奪われました。
「雷が」と、和泉が呟く。
「雷が、どうした」
「いえ、埒もなきこと」
「そうか、下がれ 」
「は」
「軍議じゃ。行かねばならぬ」
組頭はあるじに関する風聞など耳に入っていないように、常のように畏まった。
「は。後はお任せを」
「苦労をかける」
「何の。どうぞ、御存分に」
こんなやり取りに胸が高鳴るのです。
カッコいい、かっこよすぎる!✨
腹心だった十右衛門との別れの場面で村重が残す言葉がさらに胸熱です。
「儂が戻らぬ時は、十右衛門、死ぬな。おぬしには将たる器がある。いま儂の下で死なせるには惜しい。いずれ、、、」
その声に自嘲が滲む。
「いずれ、よき時に、よき主の下で死ね」
「殿!」
「行け。下知に従え!」
「は!」
これぞ武士の誉。
武士にとっての生の美しさ、生きた証はどう勇猛にどう潔く死ねるかなのです。
身動き取れない土牢の中から復讐を計る官兵衛の戦も見事でした!
物語の中で謎解き要素となる事件は冒頭にあった「進めば極楽、退かば地獄ーー」という勇み声にありました。
鮮やかな伏線回収!
戦国の世に生きた民の救いとは、、。
久々に興奮する読書体験でした。
今年の直木賞は凄い!!
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追伸
439ページに誤植発見!!🤣🤣🤣