【読書】雲を紡ぐ(伊吹有喜)
こんにちは。
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ミステリーが続いたので、心温まる感じの本を読んでみました。
【雲を紡ぐ】伊吹有喜著(文藝春秋)
《表帯》
「分かりあえない母と娘」
壊れかけた家族は、もう一度、ひとつになれるのか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布」ホームスパンをめぐる親子三代の心の糸の物語。
『直木賞候補作『彼方の友へ』で注目の著者の最新刊』
《裏帯》
美しい盛岡の空のもと、それぞれの夢や希望を紡ごうとする人々。
女子高生・美緒「お母さんが怖い」
母・真紀「私の娘はオンナを武器にする」
父・広志「この家に俺の居場所はない」
祖父・紘治郎「子供と過ごす時間は案外、短い」
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とても美しい物語でした。
不登校の娘と教師として行き詰まった母、家に居場所のない父、そんな心がバラバラになりかけた家族の再生の物語です。
盛岡の美しい風景と前向きで温かい人々に囲まれて、徐々に美緒の氷の心がとけていきます。
羊毛から紡ぐ糸を染め機を織る。
ただひたすらに心を込めて。
物語にはたえず様々な「色」が登場します。
「赤い色に託すのは生命、活力、招福、魔除け。」
「夜明けの光は闇を断ち割る。希望の色ですな」
クルミゆべしを食べながら、「私も宝石のようだと思った。ピンクは薔薇輝石(ロダイト)、黄色は黄水晶(シリトン)、緑は緑玉髄(クリンブレーズ)。宮沢賢治ならそう書くだろうかと考えたりも」
また触感もとても大事なテーマです。
「静かにペダルを踏むと、車輪の回転が導きの糸を通して羊毛に伝わり、撚りがかかった。その途端、綿菓子のような羊毛が糸になった。白くてふんわりしたものが、一瞬で強そうな糸に変わるのに胸が高鳴る。」
「ふかふかした羊毛の山に美緒はそっと飛び込む。一瞬、身体が沈んだが、すぐにふわりと浮き上がった。軽く手足を動かすと、身体が宙に浮いているみたいだ。雲に寝転んだら、きっとこんな感じだ。寝返りを打つと、袋からこぼれ落ちたピンクの羊毛がふわりと顔に落ちてきた。」
祖父の存在がとても大きい。
多くを語らずとも本質を知っています。
その導きは尊く、強い。
「責めてばかりで向上したか?鍛えたつもりが壊れてしまった。それがお前の腹じゃないのか。大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ」
「怖くて泣いている子どもに、怖くないよと言っても泣き止まないだろう。抱き上げて背中をさすってやれば泣き止む。同じだ。触ればわかる。心も伝わる。こわがらずに、もっとあの子の思いにしっかり触れてみてくれ」
しかし、前半で悪者のように描かれる母の心情に一番共感しました😅
「なんで黙ってるの!考えがあるない言いなさいよ!」、、って私も何度も子供に言ってきたなぁ。
自分を見ているようで少し辛かったです。
「言はで思うぞ、言ふにまされる」、、、「言えないでいる相手を思う気持ちは、口に出して言うより強い。そういう意味」、、、岩手県の県名の由来だそうだ。
私にはなかなか真似できない💦💦💦
岩手の人々は強い。
盛岡に行ってみたいと思いました。
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