50代からのお気楽山登り

これから山登りを始めようと思う方、ハードな山は無理だけど山歩きを楽しみたいという方に参考にして頂けたらと思います。山行記録と写真、行程図のイラスト、私なりの難易度を載せています。

【読書】リボルバー(原田マハ)

こんにちは。


いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。


足の痛みも徐々に取れてきて、リハビリ以外何もすることがないので読書が進みます😅


今回ご紹介するのは、美術関連の小説が秀逸な「原田マハ」の新作です。



【リボルバー】原田マハ(幻冬舎)


《表帯》


舞台化決定!

主演・安田章大

       続々重版!


ゴッホとゴーギャン。

生前顧みられることのなかった孤高の画家たちの、伝説のヴェールを剥がせ!


《裏帯》


誰が引き金を引いたのか?


「ゴッホの死」。

アート史上最大の謎に迫る、著者渾身の傑作ミステリ。


📖📖📖📖📖📖📖📖📖📖


私はゴッホが好きです。

そんなゴッホのファンは世界中に星の数ほどいるでしょう。

そしてそんな人々は多分誰もが思うのです。

「あの時代に生きてゴッホの側に寄り添いたかった」と。


作者はそんなファンの一人です。

あまりにも孤独でドラマチックな人生を過ごしたゴッホを想うたび、胸を締め付けられ、切なくてとめどなく涙が溢れてくる。

ゴッホに想いを寄せる人々は、少しでも彼が幸せな時を過ごした、最期もきっと救いがあったはず、そうあってほしいと願ってやまないのです。


この「リボルバー」は、そんな作者の果てしない願望から生まれた小説と言っていい。

ずっとずっとゴッホを精神的にも経済的にも支えたきたテオが結婚して家庭を持ち、画廊経営者の交代により経済的に窮地に陥っていることを知ったゴッホが下した「悲しい決断」。

謎に包まれたゴッホ自殺未遂の状況から、ゴッホを死に至らしめたリボルバーの真相に迫ります。

ゴッホは絶望の中で孤独に死を選択したのではない、、そう思いたい作者の描く救いのある最期。


生前一度も開かれることのなかったゴッホの個展が、告別式の会場となったとは初めて知りました。

「告別式の会場となったラヴー亭の二階に、ゴッホの描き溜めていた作品のいっさいを飾りつけた。晩年の傑作の数々ーーー〈ドービニーの庭〉が、〈鳥の飛ぶ麦畑〉が、〈薔薇〉が、〈医師ガシェの肖像〉が、〈オーヴェール=シェル=オワーズの教会〉が、壁を、棺の周りを埋め尽くした。そしてそれらのほとんどは、形見分けにと、テオが列席した兄の友人たち、世話になった知人たちに手渡したのだという。」

いまや世界の至宝が、配られた!?

まぁ、何かの絵は鳥小屋の壁にされてたと聞いたことがありますから、そうなりますよね。

「兄の絵には驚くべき新しさがある。でも早過ぎるんだ。次に描くべきものが何なのかわかっていて、どんどん先に行ってしまう。待っていられないんです。時代が彼に追い付くのを。」


物語のもう一人の主人公はゴーギャンです。

彼の苦しみも同時に描かれます。

こんな天才が同時期一緒に過ごしたなんて、本当に奇跡の時代でした。


作中に出てくる、絵画(タヴロー)の表現が素晴らしいです。


「〈アルルの女〉の黄色、〈アルルの寝室〉のベッドの赤、晩年に描かれた〈オーヴェール=シェル=オワーズの教会〉の空の青。それらの色に少女のサラはいつもぎゅっと抱きしめられるような感じを覚えた。風の通り道が見える空や畑は、風にもかたちがあるんだよと教えてくれているようだった。」


・オーヴェール=シェル=オワーズの教会

「コバルト色の空を背景にすっくり立つ教会が、気品溢れる貴婦人のようにも、痛手を負ってうずくまる巨大な獣のようにも見える。聖俗が混在し、清濁を併せ持つ。それがゴッホの絵の特徴だった。補色を意識した色遣いと呼吸が込められた筆運び、その斬新さ、躍動感にあらためて向き合って、サラは口の中で、ブラヴォー!と称賛した。」


・ひまわり

「十五本のひまわりたちは、好き勝手にほうぼうへ黄色い顔を向けていた。花のひとつひとつに個性があった。息を止めてサラは見入った。そして、これは花じゃない、と思った。ーーー人だ。十五人の個性的な人々。笑い、歌い、喜び、くつろぎ、あくびし、黙考し、恋をして、生きている。全部、違う。全員、すてきだ。ーーーひまわりのような人間たちだ。」


・四枚のひまわり(ゴーギャンを迎えるために描き、ゴーギャンの部屋に飾っていた)

「濃紺の背景の中でほとんど死にかけているようなひまわり、アクアブルーの背景と翡翠色の壺によく映えて咲き誇るひまわり、ペールブルーの背景と黄色のテーブルに置かれた同色の壺の中で乱れ咲くひまわり。もっとも目を引いたのはすべてが黄色過ぎるほどの黄色のタブローだった。濃い黄色、強い黄色、やわらかな黄色、淡い黄色、背景もテーブルも壺も、てんで勝手にほうぼうを向く花々も、複雑な色調の黄色で描き分けられている。にもかかわらず、ちっとも騒がしくなく、むしろ静謐で、完璧な調和をたたえている。、、、これこそが花だ。」


・星月夜

「瑠璃色の静寂が支配する画面、月と星が煌々と輝く夜半の風景。左手にすっくと背筋を伸ばした糸杉が佇み、青い山影を従えて村は静かに寝入っている。さざなみの軌跡を残して天空を巡りゆく星々は、無情の闇に沈めまいと救いの光で村を包み込む。三日月は勝利の旗のごとく季節風を受けて夜空にはためき、やがて夜明けとともに祝福された新しい日が生まれ出る。、、、、、これは……なんなんだ?風景画なのか?いや、そんなありふれたものじゃない。神を戴く聖画か。希望の真の姿か。夢にかたちを与えたものか。天空の劇場の一幕か。一瞬の永遠か。ああ、これはーーーそうだ、この筆触、この色合い、この気配、この呼吸ーーー。フィンセント、彼そのものじゃないか。


(沙目線の)・オーヴェール=シェル=オワーズの教会

「これを描き上げた数週間後にゴッホはこの世を去るわけだが、冴にはそれが不思議でなからなかった。何度見ても、まもなく自殺を遂げる人物の描いたものとはとうてい思えない。この絵はゴッホの遺書ではない。どんなに辛く苦しくても描き続けるという意思を突きつける、自分自身の人生への挑戦状のように冴には見えるのだった。」


、、、これだ。原田マハがこの物語を書いた理由。

史実を読み解き、謎に包まれた部分を推理し、空想し、愛するゴッホの幸せを希求した原田マハ渾身の物語でした。


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