【読書】羊は安らかに草を食み(宇佐美まこと)
こんにちは!
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
読書習慣を取り戻すべく、感想のブログ発信を始めたやまみほです。
二冊目(ブログ発信が二冊目というだけでなく、情けないですが、正真正銘の今年二冊目です😅)も、とても良い作品だったので、感想を書きます!
【羊は安らかに草を食み】宇佐美まこと著(祥伝社)
表帯『認知症を患い、日ごと記憶が失われていく老女には、それでも消せない〈秘密の絆〉があった』ーーー『八十六年の人生を遡る最後の旅が、図らずも浮かび上がらせる壮絶な真実!』
《日本推理作家協会賞受賞作『愚者の退く』を超える、魂の戦慄》
裏帯『過去の断片が、まあさんを苦しめている。それまで理性で抑えつけていたものが溢れ出してきているのだ。彼女の心のつかえを取り除いてあげたいーーーアイと富士子は、二十年来の友人・益恵を「最後の旅」に連れ出すことにした。それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島……満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の過酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは?旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露和にした時、老女たちの運命は急転するーー』
この本のことは、先週再開した『読書メーター』というサイトで知りました。
「お気に入りの読書家」皆さんの感想を読んで、いずれも高評価でしたし、レビューの内容も興味深かったので、本屋で見かけて即買いしました。
別の本を読み始めていたけど、こちらにスイッチ!😁
以下、読書の感想です。
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一言で言うと、これは面白かった!などという表現では到底言い足りません。
しいて言えば、そう、素晴らしかった!
傑作と呼んでいいと思います。
初めての作家さんでしたが、衝撃を受けました。
皆さん、この喉かな雰囲気の題名に騙されてはいけません。
認知症を含む老女の旅だって?
きっとのんびりと時にしんみりとした旅になるんだろうな、なんてイメージは捨ててください。
もう第一章の41ページから怒涛の展開になります。
完全に油断していた私は、いきなり脳天をぶち割られたような衝撃で、これまたページをめくる手が止められなくなり、
昨夜と今朝とさっき、合計8時間で読み終わりました。
だって、突然、容赦なく、舞台は日本敗戦直後の満州に切り替わるんですもの。
それまで安穏に暮らしていた10歳の益恵が、突然ソ連兵に追われる身となり、過酷で壮絶な体験をすることとなります。
次から次へと起こる殺戮と悲惨な情景。
それがこれでもかこれでもかと読者を襲ってくるのです。
現代の老女の旅と、満州脱出の旅が交互に語られるのですが、現代の話でもほっと一息という訳にはいきません。
そこで語られる関係者の証言にまたおぞけが立ちます。
戦時下で人とはここまで鬼畜になれるものかと、、。
この小説の大きな個性は、益恵がかつて詠んだ俳句が重要な役割を果たしている点です。
満州の事が語られる場面では、益恵の俳句が挿し絵のように太字で表されます。
そして、その章の最後でその意味を知るとき、私たち読者の心には鮮やか映像と共に、深く重い余韻が残るのです。
満州での益恵たちには、いつも死が隣にあり、そして、今旅している老女たちにもそれはすぐそこにあるものです。
死を覚悟した、死を受け入れることを知った人々の、ある種突き抜けた自由とも呼べる潔さも印象に残りました。
これはネタバレってことにはならないと思うので書きますが、最後の富士子の台詞が胸に染みます。
「別れる辛さを思うより、この世で出会えたことを喜びましょう」
人と出会い、友と語らい、老いていく未来が楽しみになりました。
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