50代からのお気楽山登り

これから山登りを始めようと思う方、ハードな山は無理だけど山歩きを楽しみたいという方に参考にして頂けたらと思います。山行記録と写真、行程図のイラスト、私なりの難易度を載せています。

【読書感想】5月に読んだ本。2025年5月30日(金)

こんにちは。


いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。


5月に読んだ本を紹介します。

《金環日食》阿部暁子著(東京創元社)


◎帯、、、

輪郭は強烈な輝きを放っているのに、彼の中心は闇に沈み、謎めいたままーーー


ひったくりの犯人を突きとめた。

事件はそれで終わらなかった。

私たちは、ある男が歩んだ道を辿り直すことになる。


〈犯罪と私たち〉を真摯に描く、実力派作家、渾身の新境地。


◎裏帯、、、

各書店員の感想

「ラスト一文を読み終えた後、心に美しい一筋の光明が差し込みました。読後の今も余韻が残る、言葉を失うほど素晴らしい作品。」

「離したくない大切なものと振り解きたい誘惑が溶け合う光景に目が離せない。相手を巻き込み巻き込まれそれでも人を信じる主人公たちの姿に涙が出そうになった。傑作必読。」

「次第に明らかになる真相に『参りました』と言いたくなる。一筋縄ではいかない展開と、登場人物たちの表と裏。丁寧で、スリリング。どうしようもない絶望と、それでも感じる希望。すごいものを読んでしまった。」

「優しさと闇、境界を漂うその心情が見事に描かれていた。希望の光が見える。私はこの作品に登場するみんなが、ごはんを美味しく食べ、学校で思う存分学べるような未来を願い続ける。」


◎感想、、、

2025年本屋大賞で第一位を獲得した「カフネ」が素晴らしかったので、阿部暁子さんの過去作品も読んでみたいと思い購入しました。

「カフネ」と同じように登場人物が、皆危なっかしくも逞しくて、それぞれ心や体に傷を抱えながらも、懸命に生きようとする姿が描かれた、苦しくも希望のある物語でした。

阿部さんは、かっこつけず、甘えず、いつもファイティングポーズで生きようとする女性を描くのがとてもうまいです。

今回の主人公(春風)も同じ。

「いつどこで何が起きても自分の身を守れるように。私よりも強い誰かが悪意を持って襲ってきた時は、もう二度と屈さずに済むように」

春風が痛みから立ち上がり、時に無鉄砲とも思える勇猛果敢さで生きようとしているのがわかる言葉です(「カフネ」における薫子的存在)

今回は男性登場人物も素敵でした。 

練が、この物語の核となる人物。

秀逸な題名のモデルでもあります(「カフネ」におけるせつな的存在)

家族を守るため、戦い続ける人生を歩みながら、見た目は「レモンとミントしか食べないみたいな顔してた」。

わかりやすい描写で、誰の頭の中にも知的でスマートで清潔感ある色白の高校生が思い描かれます、きっと。

特殊詐欺や性暴力という社会問題も扱いつつ、伏線の張り巡らし方と回収も見事で、ミステリーとしても成立していました。

最後、春風が◯◯を投げ捨てないのもいい。

きっと投げ捨てると思っていて、そうした方が美しい映像になるし、読後が爽快になりますが、そうは簡単には手放せない、それを抱えて生きていいんだと言ってもらえたような、、、。

傷をおった人々の救いになるエピローグだと思いました。

こちらも素晴らしかったです。


《志村けん160の言葉》志村けん著?(青志社)


◎帯、、、

まず、好きなことを見つける。

見つかったらそれを一生懸命続けるんだ。

誰だってうまくなれる。

だいじょうぶだぁ。


◎感想、、、

会社の先輩に借りました。

日頃全く読まない類いの本ですが、会社の先輩に「最近こんなの買ったの。読む?」と言われ断れませんでした🤣

最初「志村けん」と聞いた時、「あ、ハガレーナが好きな人だ!もしかして、ハガレーナ読むかな?」と思って借りたというのもあるのですが、よく考えたらハガレーナが好きなのは「所ジョージ」でした(笑)

なので、私が読まねばなりませぬ(涙)

なかなかに苦痛でしたが、なんとか一晩で読み終わりました。

2020年にコロナで亡くなり、日本中に衝撃と悲しみを与えた志村けんさん。

70年の生涯の全てをお笑いにかけた志村さんのインタビュー記事集となっています。

様々な取材での発言を集めているので、同じことの繰り返しが多かったですが、それだけぶれずに生きたということなのだろうと理解しました。

一番印象的だったのは、低賃金で必死に働いているある母子が週末志村けんの番組を二人で見て、笑い、次の一週間を頑張っているという手紙が紹介されていた章でした。

ストレスが多く働いても働いてもなかなか豊かになれない日本人の食卓に笑いを届け、人々を笑顔にするために、彼のやって来たコントは、どれだけの影響力を持っていたのか?

その功績は計り知れないなと感じました。

日本人なら誰もが知っているギャグをこんなにも生み出していたんだと再認識し、改めて早すぎる死を残念に思います。


《熟柿》佐藤正午著(角川書店)


◎帯、、、

熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと。


◎裏帯、、、

息子の顔見たさに何かひとつ事を起こせば

そのたびにパトカーがやってくる。

わたしはこれまで三回パトカーに乗った。

そのことが繰り返される。

それがわたしの人生になる。

わたしはパトカーに乗り慣れた老人になどなりたくないし、そんな母親の姿を息子に見せたくもなかった。

そんな母親が自分の産みの母親だと知られるべきではなかった。


人生を踏み外した女性の静かな決意


どうにかして

我が子と再会したい。

でも子供の将来を思うなら、

わたしは、遠く離れて

いなければならない。


◎感想、、、

面白くて一気読みしました。

妊娠中に轢き逃げ事故を起こし、刑務所内で出産し、刑期を終えた時に夫と離婚し、我が子に会えないまま各地を転々としながら必死に生きようとする主人公。

何度となく息子に会いに行こうとして、トラブルとなって、会うことかなわず、どんどん追い詰められていく「市木かおり」にどっぷり感情移入して読みました。

どんなに真面目に働いても、贅沢をせず慎ましく暮らしていても、決して消えない前科者という焼き印。

自分の過去が回りにバレるのではないかといつも不安を胸に抱え、もしかしてこの人は気づいているのではないかなどと疑心暗鬼に陥ると、周囲の人々の言動が途端に不気味で悪意に満ちているように感じるところなど、絶妙でうまいなぁ!と思いました。

殺人事件などが起きるミステリーではありませんが、ジリジリと追い詰められていく様子が、なかなかにスリリングでヒリヒリします。

最後、突然訪れた邂逅シーンもリアリティーがあってとても良かったし、希望を感じるラストも印象的でした。

いっぱい裏切られたけど、最後に残ったのは、信じられる善意の人達で、心が温かくなりました。

すごい職人の、派手さはないけど重厚で緻密で味のある作品を鑑賞したような感慨があります。

素晴らしかったです。


《僕には鳥の言葉がわかる》鈴木俊貴著(小学館)


◎帯、、、

シジュウカラ語を解き明かすまての鳥愛あふれる日々。

「現代のドリトル先生による新しい動物言語学の誕生だ」

「鈴木先生みたいに観察する人が増えたら、もっと楽しい世界になりそうです」


◎裏帯、、、

人間には人間の言葉があるように

鳥には鳥の言葉がある。


聞けばわかる!

鳥の言葉 二次元コードつき


◎感想、、、

以前「ダーウィンが来た!」で、鳥が言葉を話しコミュニケーションをとっている様を見て、ぶったまげた記憶があります。

その後事ある毎に友人に「シジュウカラは言葉が話せるんだって。それを使って自分より大きな鳥を騙したりもするんだってよ!」などと話していたのですが、、。

前回の読書会の時にアコちゃんが購入して、それが本になっていることを知り、すぐに貸してもらいました。

想像通りの面白さで、一気読みでした。

ユーモア溢れる表現や発想で、思わずクスリと笑ってしまう場面が何度もあります。

何より少年時代から好きだった生き物の観察を、大学生、院生、学者になってからも、同じ気持ちと眼差しを持ち夢中で続けている姿が、読んでいて楽しくなるんですよね。

生き物が好きで、観察するのが楽しくて仕方ないというのがよくわかるし、新たな発見をした時の興奮がこちらにも素直に伝わってきて、読書中ずーっと楽しかったです。

でもそんな中、色んな学術書に、「言語を持つのは人間だけだ」という記述を見つけるんですよね。

そんなのは井の中の蛙の発想だ!それを覆せるのは僕しかいない!と立ち上がるところが超かっこよかったです。


「動物はしゃべらないという二千年以上にわたる史上最大の誤解を解き、井の中の蛙化した人類を救うために、僕は立ち上がったのだった」


シジュウカラが言葉を操ることを証明するためにどんな実験を繰り返したのか順を追って分かりやすく解説してあります。

言語学者などからの反論に対抗すべく、反証できない証拠を見つけるために、決してあきらめないその行動力に天晴れと言いたいし、アイデアや閃きが痛快でもありました。

苦労もあったと思うのですが、本書からはその喜びだけが伝わってくるのです。

結果、学会から高い評価を得て、世界中を驚かせ、ついには動物言語学という新たな学問を立ち上げるとは!

歴史に名を刻むような方がまだ40代だなんて驚きです。

他の動物学者にも多大な影響を与えているようですし、今後どんな発見があるのか先が楽しみです。

もしも次の著作物が出たら、今度は自分で購入したいと思います。

あと、庭に巣箱、置いてみるかな、、などと思ってしまった🤣

鈴木先生のご両親のシジュウカラを守るための連携プレー、素晴らしかったです(笑)


《未明の砦》太田愛著(角川書店)


◎帯、、、

共謀罪、始動。

標的とされた四人の若者は、公安とグローバル企業を相手に闘うことを選ぶ。

組織に潰されながらも立ち上がる。

その憤怒に希望が詰まっている。


◎裏帯、、、

大手自動車メーカー「ユシマ」の工場で働く四人の非正規工員は、夏休みのある出来事を契機に大きくその人生の軌道を変える。

そして冬、彼らは共謀罪の初の標的となる。

逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とはーー。

共謀罪始動の真相を追う刑事、この国を超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。

怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。

それぞれの思いが交錯する。


最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。


◎感想、、、

さすがという他ない。

太田愛さんの5作目は、社会を痛烈に批判し問題提議する骨太な快作でした。

大手自動車メーカーの工場で働く非正規雇用労働者が主人公です。

あんなにも過酷な労働環境で日々働いている人達がいるのだと知って驚きました。

海外と比べて、日本人の労働時間が長いのは効率が悪いからで、それでも安価に商品を提供できるのは人件費が安いからだという事実。

日本人の時間給の低さに「え?そうなの?私たち騙されてた?」と思うほどです。

機械は念入りにメンテナンスされ大切にされるけれど、労働者はその部品の様に使い捨てされ、壊れたら差し替えればいい。

壊れるとは、心や体を病み、時には命まで奪われるという意味です。

それでも労災認定もされず、それを拒めば雇用満了となる、、従うしかない労働者の実態。

日本人の教育過程で規則を守ることを叩き込まれますが、それは守るのではなく従うことだという矢上の気付きには背筋が凍りました。

国に飼い慣らされ、会社に都合よく使われ、御用記事を何の疑問もなく信じている我が身の無知を恥じます。

日本の労働者よ、世界を学べ!自分の頭で考えろ!声を上げろ!それが未来を変えるのだ!そう太田愛さんに渇を入れられた気分です。

今回も巻末の参考文献の数がすごいことになってます。

どうやらモデルはト◯タみたいですね。


《一次元の挿し木》松下龍之介著(宝島社)


◎帯、、、

『このミステリーがすごい!』大賞、文庫グランプリ受賞作


二百年前の人骨のDNAが四年前に失踪した妹のものと一致!?


「謎の牽引力、ストーリーの面白さは、今回はこれがダントツ」

「古人骨のDNA鑑定が暴く驚くべき真相」

「謎の散らばせ方、話の運び方も上手く、最後までぐいぐい読ませました。文章も上手い」


◎ウラスジ、、、

ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。

大学院で遺伝子人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。

不可解な鑑定結果を担当教授の石見崎に相談しようとした矢先、石見崎は何者かに殺害された。

古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室から古人骨も盗まれた。

悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出すが、予想もつかない大きな企みに巻き込まれていくーー。


◎感想、、、

『このミス』大賞はハズレがないですね。

面白かったです。

二晩で一気読みしました。

題名がネタバレみたいなものなのに、途中まで全く気づかなかったし、二転三転するストーリー展開で飽きさせません。

凶悪な殺人犯との手に汗握る格闘場面も映像が目に浮かんでハラハラしました。

ヤツが近づいてくる時に聞こえるあの「ちゃぽん」は怖いよ~💦

トラウマになりそうなほどです。

しばらく「ちゃぽん」を聞いたら、後ろを振り返っちゃいますよ。

ただ、ただね~、どうしても最後が納得行かないんだよなぁ。

悠の心変わりがね~、、なんかねぇ、、。

今まで眠れないほど恋い焦がれ、安定剤を飲むほどに病み、命をかけてでも探し出したいと思っていた存在なのに、最後いとも簡単に諦められる二人に、ドン引きしました(涙)

結局惹かれていたのは美しさだけだったのか~い!ってなっちゃいますよ。

新しい可愛い娘ちゃんとよろしくやってる、あのハッピーエンドは気に入らない(笑)

まぁ、物語として、そこを落としどころにしないと、収集つかなくなるのは分かるのだけど、、。

そこだけが残念でしたが、、、全体としてはとても良く寝られた構成で、スピード感もあって楽しめました!


以上、5月に読んだ本たちの紹介でした。


今夜は第5回の『お気楽読書会』です。


みんなからどんな本を紹介してもらえるか、楽しみだ!!


いつもブログを応援していただき、ありがとうございます。

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